温泉施設や入浴施設はなぜレジオネラ症が発生するのか
プールやお風呂の水は、ろ過器などを設けて循環させていますが、消毒や掃除がしっかりされていない場合、ろ過器や配管の中に「生物膜」(バイオフィルム)ができてしまうことがあります。
このバイオフィルムには、アメーバや細菌などの微生物が住んでいて、レジオネラ菌がこの中で増殖して水を汚染します。
レジオネラ菌で汚染されたお風呂やプールの水から出る微細な水滴のことを「エアロゾル」と言います。
これを吸ったり、溺れて気管に水が入ったりすると、肺に菌が入ってしまってレジオネラ症にかかるリスクがあります。
肺の中にある「マクロファージ」という細胞は、アメーバと似たような役割を果たしていて、レジオネラ菌を食べます。
菌を内包したエアロゾルが肺に届くと、肺胞内で増殖し肺炎などを引き起こす原因となります。
バイオフィルムて何?
浴槽や温水プール内の適切な消毒や清掃が行われない場合、浴槽やプールの壁面や配管にぬめりが付着することがあります。
このぬめりはバイオフィルムと呼ばれ、槽内に取り付いた生物や微生物が生成する粘性の物質によって形成されます。
浴槽や温水プールの水は温かく、入浴者の皮脂や他の有機物が多く含まれているため、それを栄養にして、壁面やプールの内部配管などに付着したバイオフィルムの中でレジオネラ菌などの細菌が増殖し水を汚染していきます。
バイオフィルム内で、なぜレジオネラ菌が繁殖するのか
バイオフィルムの内部は栄養分が豊富である とともに、消毒薬剤や紫外線等による 殺菌作用からも保護されています。
また、レジオネラ属菌は、細菌を捕食するアメーバなどの原生動物に食べられても消化・殺菌されにくく、それらの中に寄生し、増殖できる性質を備えています。
バイオフィルム内では、アメーバ等への寄生によりレジオネラ属菌が増殖しやすく、 増殖したレジオネラ属菌は、やがて寄生しているアメーバなどの細胞を破壊し、浴槽水やプール水中に出てきます。 従って、レジオネラ属菌の供給源を絶つためには、レジオネラ属菌の増殖の場となるバイオフィルムを除去し、生成を抑制する対策を行う必要があります。